子どものやる気を引き出したくて、「頑張って」「やればできる」と声をかける。大人として自然な行動です。
しかし、子どもが動けない理由を聞かずに励ますと、気持ちが置き去りになることがあります。やる気を作る魔法の言葉を探すより、声をかける順番を整える方が大切です。
最初に事実を見る
「やる気がない」は、大人の解釈です。
練習を始めなかった。途中で座った。同じ失敗の後に縄を置いた。まず、見えた事実と評価を分けます。
疲れているのかもしれません。方法が分からないのかもしれません。失敗を見られるのが怖いのかもしれません。理由を決めつけずに観察します。
次に本人の感覚を聞く
「どうしてやらないの」と責める形ではなく、「今、どこが難しい」「もう一回やりたい気持ちはある」と聞きます。
答えを誘導しない
「悔しいよね」「本当は続けたいよね」と先に感情を決めると、子どもは大人に合わせることがあります。
分からない、今日はやりたくないという答えも受け取ります。やる気を引き出す前に、今の状態を一緒に知ることが必要です。
答えが出るまで待つ
大人は沈黙が苦手です。子どもが考えている間に、助言を続けたくなります。
でも、自分の言葉を探す時間がなければ、対話は大人の説明に変わります。少し待ち、必要なら「もう一回試してから話す?」と選択肢を渡します。
スポーツ指導で子どもを伸ばす対話でも、答えを急がない理由を説明しています。
小さな選択肢を渡す
「頑張るか、やめるか」の二択は大きすぎます。
一回だけ試す。難しい部分を分ける。別の技をしてから戻る。今日は動画を見て終える。子どもが選べる小さな選択肢を用意します。
自分で選んだ行動には、やらされた練習とは違う責任が生まれます。
結果ではなく試したことを言葉にする
「できたから偉い」と結果だけを評価すると、失敗した日は価値がないように感じます。
昨日と違う方法を試した。失敗した後に自分で考えた。分からないと質問できた。結果に至る前の行動を具体的に伝えます。
大げさに褒める必要はありません。見ていた事実を言葉にするだけで、子どもは自分の変化に気づけます。
やる気が出ない日もあると認める
子どもはいつでも前向きではありません。大人にも、集中できない日や休みたい日があります。
一日休むことと、好きなことを諦めることは同じではありません。痛みや疲労があるときは、安全を優先します。
毎回やる気を引き出そうとすると、大人も子どもも苦しくなります。長く続ける中の一日として見る視点が必要です。
親と指導者が同じ答えを求めすぎない
指導者が挑戦を待っているのに、家庭で結果を急かされれば、子どもはどちらに合わせるか迷います。
目標、練習の考え方、困っていることを、親と指導者で共有します。技術の細部より、子どもがどのような気持ちで取り組んでいるかを話してください。
子どもの才能を伸ばす親の関わりも参考になります。
声かけを変える前に整えたい環境
目標と課題の大きさを合わせる
どのような言葉をかけても、課題が今の力から離れすぎていれば動きにくくなります。最終目標を変えなくても、今日取り組む動きを小さく分け、本人が選べる課題を作ります。「全部できたか」ではなく「どこまでなら試せそうか」と聞いてください。
失敗を見られる不安を減らす
仲間や保護者の前で失敗することが恥ずかしく、練習を避ける子もいます。見ている人が結果だけを評価していないか、失敗した瞬間に笑いや助言が集中していないかを確認します。一人で試せる場所や時間を用意することが、励ましの言葉より有効な場合があります。
休息と生活の状態を見る
睡眠不足、空腹、学校生活の疲れがあれば、意欲を出すこと自体が難しくなります。練習場面だけを見て性格の問題にせず、最近の生活や体調を聞きます。休む日を計画に含めることは、諦めることではありません。長く取り組むために必要な選択です。
声かけを変えた結果は、一回の反応で判断しません。子どもがすぐ話さなくても、考える時間を置いた後に自分から練習へ戻ることがあります。大人が沈黙を埋めようと助言を重ねると、本人が考える余地を失います。問いを一つ渡したら待ち、後で必要な支援を確認してください。
やる気を操作せず本人の意思を支えます
粕尾将一講演会では、日本代表経験者40名の育成現場と親としての経験から、子どものやる気を操作するテクニックではなく、本人の意思が動く環境と対話を伝えます。
