スポーツ指導では、技術を正しく教えることが大切です。しかし、正しい答えを早く渡せば、子どもが早く伸びるとは限りません。
指導者が全部を教えると、子どもは答えを待つようになります。自分で観察し、試し、失敗から考える機会が減るからです。
スポーツ指導の対話は、話を上手にするためではありません。子どもが自分の意思で次の行動を選べる土台を作るものです。
対話は正解を教える時間ではない
会話では、情報を伝えたり、予定を確認したりします。対話では、相手の考えを聞きながら、自分も考え直します。
指導者が「こうすればできる」と結論を渡すだけでは、説明で終わります。「今の動きはどう感じた」「次は何を変えたい」と聞くと、子どもの中にある考えが言葉になります。
答えが出ない時間を待つ
質問した直後に子どもが答えられないことがあります。そこで指導者がすぐ答えを言うと、考える時間を奪います。
分からないと言ってもよい。もう一度試してから話してもよい。待つこともスポーツ指導の一部です。
失敗を修正点だけで見ない
失敗を見ると、指導者は間違いを直したくなります。
しかし、子どもが何を試した結果なのかを聞かずに修正すると、本人の意図が消えます。同じ失敗に見えても、新しい動きへ挑戦した失敗と、集中せずに繰り返した失敗では意味が違います。
「何をしようとしたのか」「前と何が違ったのか」を聞くと、失敗が次の練習材料になります。
子どもの好きな気持ちを先に確認する
上達させたい気持ちが強いほど、大人は練習量や目標を先に決めます。
でも、本人は何を目指しているのでしょうか。大会に出たいのか、新しい技を覚えたいのか、友達と楽しみたいのか。目的が違えば必要なスポーツ指導も違います。
子どもの好きな気持ちは、指導者が作るものではありません。好きが続けられる環境を整え、その気持ちが動いたときに必要な情報を渡します。
教えないことと放っておくことは違う
できるだけ教えない指導は、子どもを放置することではありません。
安全を守る。目標までの道筋を示す。挑戦できる課題を用意する。困ったときに戻れる場所を作る。指導者は環境を整え、必要な場面で軌道を修正します。
答えを全部渡さないからこそ、子どもは自分で考える必要があります。
保護者と指導者の役割を分ける
保護者が家庭で技術指導を始めると、親子関係と指導関係が混ざることがあります。
保護者は、安全、生活、応援、相談先を支える。指導者は、技術と練習環境を整える。役割を分けると、子どもは家庭を評価され続ける場所にせずに済みます。
子どもの才能を伸ばす親が見ているものも参考にしてください。
日本代表経験者40名の育成で見えたこと
日本なわとびアカデミーでは、日本代表経験者40名を育成してきました。
一人ひとり、伸びる時期も目標も違います。指導者が選手を一方的に作るのではなく、本人の意思が動き、周囲の環境が整ったときに成長が進みます。
結果を出した子だけでなく、迷っている時期にどのような対話をしたかが、スポーツ指導の大切な経験です。
子どものやる気を引き出す声かけの順番では、現場で使える問いを紹介しています。
指導者と保護者が振り返りたい三つの場面
練習を始めないとき
すぐに「やる気がない」と決めず、課題が難しすぎないか、失敗を見られることが不安ではないか、疲れが残っていないかを見ます。理由を聞く前に叱ると、子どもは自分でも分からない状態を言葉にできません。観察した事実を短く伝え、今どのような感じかを尋ねます。
結果が出なかったとき
励ますつもりの「次は頑張ろう」も、本人が悔しさを整理する前には負担になることがあります。まず何が起きたと感じているかを聞き、本人が見つけた課題を確認します。技術的な助言は、その後に一つへ絞ります。対話は反省点を増やす時間ではありません。
目標が大人と違うとき
選手は楽しみたいが、親や指導者は大会結果を求めていることがあります。どちらが正しいかを決める前に、本人が競技を続けたい理由と、大人が心配していることを分けて話します。目標を共有できないまま練習量だけを増やしても、長期的な成長にはつながりにくくなります。
スポーツ指導と対話を講演で伝えます
粕尾将一講演会では、日本代表選手の育成、自身の子育て、指導現場の実例から、子どもの好きを伸ばす関わりを伝えます。指導者、保護者、教職員向けに内容を調整できます。
