親子で会話はしているのに、子どもの考えていることが分からない。思春期になると、必要なことしか話さなくなることもあります。
親子コミュニケーションを増やそうとして質問を重ねると、子どもには尋問のように聞こえることがあります。必要なのは会話の量だけではありません。
会話と対話は同じではない
会話では、予定や出来事を伝え合います。「宿題は終わった」「明日は何時に帰る」といったやり取りも、生活に欠かせません。
対話では、すぐに結論を出さず、相手の言葉を聞きながら自分の考えも見直します。親が正解へ導くことより、子どもが自分の気持ちに気づくことを大切にします。
対話に一つの正解を求めない
大阪・関西万博「いのちのあかし」で育成対話者を務めた経験から、粕尾将一は「相手と対話をしているようで、実は自分自身との対話をしている」と考えています。
相手を納得させることが目的になると、対話は議論や説得に変わります。
子どもの話を評価する前に聞く
子どもが「習い事を辞めたい」と言ったとき、親は理由を分析し、続ける利点を説明したくなります。
その前に、「何があった」「いつからそう思っていた」と聞きます。途中で「それは甘え」「先生に失礼」と評価すると、子どもは説明をやめます。
同意することと、最後まで聞くことは別です。親と意見が違っても、話を聞くことはできます。
親も自分の気持ちを言葉にする
対話では、子どもだけに自己開示を求めません。
「続けてほしい気持ちが強くて、すぐ反対してしまった」「あなたが後悔しないか不安だった」と、親自身の感情を主語にして伝えます。
「あなたのため」と一つにまとめるより、親の不安や期待を具体的に伝えた方が、子どもは何に反応されているか理解できます。
沈黙を埋めない
思春期の子どもは、気持ちをすぐ言葉にできないことがあります。
答えが出ない時間に助言を重ねると、親の話だけで終わります。「今は話せないなら、また後で聞かせて」と区切ることも必要です。
対話は一度で結論を出すものではありません。時間を置いて続けられます。
子どもが選べる部分を残す
安全、健康、家族の生活に関わることは、大人が決める必要があります。一方で、練習方法、目標、相談する相手など、子どもが選べる部分もあります。
親が守る部分と、本人に任せる部分を分けると、親子コミュニケーションが命令だけになりません。
子どものやる気を引き出す声かけの順番も合わせて確認してください。
意見が違っても関係を切らない
良い対話は、必ず意見が一致する時間ではありません。
親と子どもで大切にしているものが違うこともあります。違いが分かったうえで、どこまで一緒に決め、どこから本人へ任せるかを考えます。
論破せず、納得を強制せず、関係を残す。これが親子コミュニケーションの土台です。
子どもの才能を伸ばす親の関わりでは、見守ることと環境を整えることを紹介しています。
親子の対話が難しくなったときの戻り方
その場で結論を出さない
互いに感情が強くなった状態では、正しい言葉を選ぶことが難しくなります。「今は決めず、夕食後にもう一度話そう」と時間を置きます。話を打ち切るのではなく、再開する時刻を決めることで、子どもは無視されたと感じにくくなります。
親の心配を主語にして伝える
「あなたは何も考えていない」と決めつけず、「連絡がなくて私は心配した」「続けたい気持ちが分からず不安になった」と伝えます。事実と親の気持ちを分けると、子どもは人格を否定されたと受け取らず、自分の考えを説明しやすくなります。
合意できた小さな点を残す
進路や習い事など大きなテーマでは、一度で完全に合意できないことがあります。次に調べること、相談する相手、もう一度話す日だけを決めても構いません。対話の成果を結論だけで測らず、関係を保ったまま次の話し合いへ進めたことも大切にします。
子どもが話した内容を、許可なく家族や指導者へ広げない配慮も必要です。安全に関わる場合を除き、誰へ何を共有するかを本人と確認します。話せばすぐ大人同士で決められると感じると、次から本音を隠します。対話の内容だけでなく、話した後の扱いが信頼を作ります。
親子や職場で使える対話を講演で扱います
粕尾将一講演会では、大阪・関西万博の育成対話者、指導者、親としての経験から、正解を押し付けない対話を具体的に伝えます。保護者、教職員、企業研修に対応します。
